この記事でわかること
- 労災保険は国籍・在留期間に関わらず全員適用されること
- 事故発生時の初動対応フロー(救護→報告→申請)
- 療養補償(指定病院・立替払い)・休業補償の申請手続き
- 多言語での事故報告書聴取の実務ポイント
- 再発防止措置の記録・保存義務
労災保険の適用(国籍問わず全員)
労働者災害補償保険(労災保険)は、国籍・在留資格・雇用形態を問わず、 日本国内の事業所に使用されるすべての労働者に適用されます。 育成就労・特定技能・技術人文知識国際業務など、どの在留資格でも同様です。
| 給付の種類 | 内容 | 外国人への適用 |
|---|---|---|
| 療養補償給付 | 労災指定病院での治療費(無料)または立替後の費用支給 | 国籍問わず適用 |
| 休業補償給付 | 療養のため休業した場合、給付基礎日額の60%(特別支給金と合計80%) | 国籍問わず適用 |
| 障害補償給付 | 後遺症が残った場合、障害等級に応じた年金または一時金 | 国籍問わず適用 |
| 遺族補償給付 | 死亡した場合の遺族への年金または一時金 | 国籍問わず適用(海外在住遺族も対象) |
注意|労災隠しは厳禁
- 外国人材が「ビザへの影響を恐れる」「会社に迷惑をかけたくない」と申告をためらうケースがあります
- 労災を申告しないよう誘導・隠蔽することは労働安全衛生法違反(50万円以下の罰金)です
- 労災申請は在留資格の更新・取得に不利な影響を与えません。多言語でこの事実を説明してください
事故発生時の初動対応フロー
事故が発生した瞬間から、企業・監理支援機関・労働基準監督署への対応が始まります。 以下の手順を事前に周知・訓練しておくことで、対応の遅れを防げます。
救護・119番(緊急の場合):まず負傷者の安全を確保し、必要であれば救急車を呼ぶ。外国人材が日本語で119番に電話できない場合は日本人スタッフが代理で行う。
現場保全と証拠収集:事故現場の状況を写真・動画で記録する。目撃者がいれば多言語で証言を記録しておく。
上長・安全担当者への報告:事故の概要(日時・場所・負傷者・状況)を即日報告。社内の事故報告フォームに記録する。
監理支援機関への連絡:育成就労・技能実習の外国人材の場合、監理支援機関へ速やかに報告する義務がある。
労働基準監督署への届出:死亡または休業4日以上の事故は「労働者死傷病報告」を遅滞なく(死亡・休業4日以上は翌月末まで)提出する義務がある。
労災申請書の作成・提出:本人または家族の代わりに療養補償・休業補償の申請書を作成し、労働基準監督署または労災指定病院に提出する。
療養補償・休業補償の手続き
療養補償給付の申請
労災指定病院で受診する場合は、「療養補償給付たる療養の給付請求書(様式第5号)」を病院窓口に提出します。 指定病院以外で受診した場合は、いったん費用を立て替えて後から「療養補償給付たる療養の費用請求書(様式第7号)」で請求します。
POINT|労災指定病院の事前確認を
- 事業所近くの労災指定病院リストを事前に確認し、外国人材にも周知しておく
- 緊急時に指定病院以外に搬送された場合でも、後から立替払い申請が可能
- 通院のための交通費も別途請求できる(様式16号の5)
- 外国語通訳が必要な場合の通訳費用は原則自己負担だが、一部補助制度を持つ自治体もある
休業補償給付の申請
療養のため労働できない期間(待期3日間を除く)について、給付基礎日額の60%の休業補償給付と20%の特別支給金(計80%)が支給されます。 申請書は「休業補償給付支給請求書(様式第8号)」を労働基準監督署に提出します。
多言語での事故報告書記載支援
事故の原因・経緯を正確に把握するためには、外国人材本人から多言語で詳細を聴取することが不可欠です。 日本語のみの聴取では、痛みの部位・事故の経緯・作業手順の誤りなどが正確に伝わらないリスクがあります。
多言語聴取のポイント
- 通訳者(または多言語対応の監理支援機関スタッフ)を介して聴取する
- 「いつ・どこで・何をしていたか・どうなったか」を順番に確認する
- 専門用語(機械名・作業名)は図や写真を使って確認する
- 聴取内容を母国語でメモさせた上で、日本語に翻訳して記録する
- 本人に内容を確認してもらい、署名を求める(記録の信頼性向上)
POINT|CSTMの4言語対応で事故報告をサポート
- CSTMキャリアサポートでは、ベトナム語・ミャンマー語・インドネシア語・英語の4言語で事故報告の聴取支援が可能
- 24時間のホットラインを活用することで、時間外の事故発生時にも対応
- 多言語事故報告書テンプレートの提供も行っています
再発防止措置の記録義務
労働災害が発生した場合、事業主は再発防止措置を講じ、その内容を記録する義務があります。 育成就労・技能実習の外国人材に関わる事故は、監理支援機関への報告とあわせて、 外国技能実習機構(OTIT)または出入国在留管理庁への届出が必要な場合もあります。
再発防止記録に含める内容
- 事故の発生日時・場所・状況の詳細
- 原因分析(ヒューマンエラー・設備要因・環境要因等)
- 講じた再発防止措置(設備改善・作業手順変更・教育訓練等)
- 防止措置の実施日と担当者
- 同種事故発生がないことの確認(フォローアップ日)
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よくあるご質問
Q. 在留期間が短い外国人材でも労災保険は適用されますか?
労災保険は在留期間・国籍に関わらず、日本国内の事業所で就労する全ての労働者に適用されます。雇用保険・社会保険の適用範囲とは独立しており、たとえ試用期間中でも、入社初日でも適用されます。
Q. 外国人材が労災を「隠したい」と言う場合どうしますか?
労災を隠すことは「労災隠し」として労働安全衛生法違反となり、企業に50万円以下の罰金が科される可能性があります。外国人材が「ビザに影響する」「会社に迷惑をかける」と思い込んで隠そうとするケースがありますが、労災申請はビザに影響しないことを多言語で明確に伝えてください。
Q. 労災認定された場合、企業の追加負担はありますか?
労災保険料は全額事業主負担ですが、一定以上の労災件数が発生すると翌年度以降の保険料率が上がる「メリット制」が適用されます(適用は継続事業で保険料が一定額以上の場合)。ただし、保険給付自体は労災保険から支払われるため、補償費用を企業が直接負担することはありません。
Q. 休業補償の受給中、企業は給与を支払う義務がありますか?
労災保険の休業補償給付は給付基礎日額の60%(特別支給金と合わせて80%)です。企業が法律上追加で補填する義務はありませんが、就業規則や労働協約で「労災時に給与補填を行う」と定めている場合はその内容に従います。外国人材に対して事前に説明しておくことでトラブルを防げます。
Q. 事故報告書は日本語のみで良いですか?
労働基準監督署への届出書類は日本語で作成する必要がありますが、外国人材本人から事故状況を正確に聴取するためには多言語での聴取が不可欠です。ベトナム語・ミャンマー語等で聴取した内容を日本語に翻訳して記録することが、事実関係の正確な把握と再発防止に役立ちます。
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