この記事でわかること
- 健康保険・厚生年金・介護保険の加入義務の範囲と例外
- 入国時に必要な社会保険加入手続きと提出書類の一覧
- 海外在住扶養家族の被扶養者認定の要件と証明書類(2020年厳格化後)
- 帰国時の脱退一時金制度の仕組みと申請手順
- 社会保障協定締結国からの外国人材への二重加入防止ルール
社会保険の加入義務(健康保険・厚生年金・介護保険)
外国人材を雇用する場合、社会保険の加入義務は日本人と同一です。国籍・在留資格の種類によって免除・除外になるケースはごく限られており、育成就労・特定技能・技術人文知識国際業務などの在留資格で働く外国人材はほぼ全員が強制適用の対象です。
| 保険種別 | 適用要件 | 外国人への適用 | 保険料負担 |
|---|---|---|---|
| 健康保険 | 週所定労働時間が常時雇用者の3/4以上(または社保拡大適用要件を充足) | 国籍問わず強制適用 | 労使折半(標準報酬月額の約5%ずつ) |
| 厚生年金保険 | 同上 | 国籍問わず強制適用 | 労使折半(標準報酬月額の約9.15%ずつ) |
| 介護保険 | 40歳以上65歳未満の第2号被保険者 | 国籍問わず適用(外交・公用は除外) | 健康保険料と同時徴収(約0.9%) |
注意|「短期在留者は不要」は誤解
- 「3ヶ月未満の短期在留だから社会保険不要」は誤りです。在留期間の長短にかかわらず、要件を満たせば加入義務が発生します
- 未加入が発覚した場合、事業主は最大2年分の保険料を遡及徴収されます
- 育成就労計画の審査でも社会保険加入状況が確認されます
社会保険拡大適用(2022年10月〜)
2022年10月以降、従業員101人以上の企業では週20時間以上・月賃金88,000円以上・雇用見込み2ヶ月超のパート・アルバイトも社会保険の適用対象となりました(2024年10月からは51人以上)。 外国人材でこの要件を満たすアルバイト・パートタイム雇用の方も対象です。
加入手続きと書類
外国人材が入国・就労を開始したら、速やかに社会保険の資格取得手続きを行います。 手続きが遅れると保険証の発行が遅れ、本人が医療機関を受診できない事態になるため注意が必要です。
必要書類一覧
| 書類名 | 提出先 | 期限 |
|---|---|---|
| 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届 | 年金事務所(または健保組合) | 事実発生から5日以内 |
| 在留カードのコピー | 同上 | 同上 |
| マイナンバー(基礎年金番号の確認) | 同上 | 取得次第 |
| 住民票(住民登録後) | 必要に応じて | 住民登録後速やかに |
POINT|入国直後の手続きチェックリスト
- 住民登録(市区町村窓口):入国後14日以内
- マイナンバー取得(住民票登録と同時に通知)
- 健康保険・厚生年金の資格取得届:就労開始から5日以内
- 雇用保険の資格取得届:就労開始翌月10日まで
- 国民健康保険の脱退届(前職が国保だった場合)
電子申請の活用
社会保険の資格取得届はe-Gov電子申請またはGビズIDを使った電子申請が可能です。 複数名の外国人材を同時に雇用する場合は、給与計算ソフトのAPI連携を活用すると手続きの漏れを防げます。
海外在住扶養家族の取扱い(特例・証明書類)
外国人材の家族は多くの場合、母国に残っています。 健康保険の被扶養者に海外在住家族を追加することは可能ですが、2020年4月の制度改正以降、証明書類の要件が大幅に厳格化されています。
海外特例の要件
- 被保険者(外国人材本人)が日本国内に居住していること
- 扶養に入れる家族が主として被保険者の収入で生計を維持していること
- 送金の実績があること(仕送り証明)
必要な証明書類
| 書類の種類 | 具体例 | 注意点 |
|---|---|---|
| 続柄証明 | 戸籍謄本・出生証明書・婚姻証明書 | 外国語の場合は日本語翻訳が必要 |
| 生計維持の証明 | 送金明細(銀行振込履歴)・本人の収入証明 | 年間送金額が家族の年収を上回ることが目安 |
| 収入証明 | 家族の収入を示す書類(現地政府発行等) | 公的機関の証明が望ましい |
| 海外特例要件確認書 | 健保組合・協会けんぽの所定書式 | 年に1回の現況届が必要な場合あり |
注意|被扶養者の医療費
- 海外在住の被扶養者が現地で医療を受けた場合、「海外療養費」として請求できますが、現地の医療機関での支払い後に申請する必要があります
- 日本国内と同様の自己負担割合が適用され、海外での医療費全額が給付されるわけではありません
- 外国語の領収書・診療明細書は翻訳が必要です
国民年金との違い
外国人材が会社員として厚生年金に加入する場合、国民年金(第1号被保険者)への加入は不要です。 厚生年金加入者は第2号被保険者として自動的に国民年金にも加入しているとみなされます。
| 項目 | 厚生年金(会社員) | 国民年金(自営業等) |
|---|---|---|
| 保険料 | 標準報酬月額の約18.3%(労使折半) | 月額16,980円(2026年度)定額 |
| 事業主負担 | あり(保険料の半額) | なし |
| 給付水準 | 老齢厚生年金+基礎年金 | 基礎年金のみ |
| 脱退一時金 | あり(帰国後2年以内に申請) | あり(同様) |
外国人材が途中で退職して無職となった期間は、国民年金・国民健康保険への切替が必要になります。 特に転籍期間中の空白期間や、在留資格変更の待機期間中の対応を事前に説明しておくことが重要です。
帰国時の脱退一時金制度
外国人材が帰国する際、一定の受給資格を満たせば「脱退一時金」として厚生年金・国民年金の保険料の一部が払い戻されます。 この制度は多くの外国人材にとって重要な関心事であり、入国前から正確に説明しておくことが信頼関係の構築につながります。
脱退一時金の受給要件
- 日本国籍を有しない(外国人であること)
- 厚生年金保険または国民年金の加入期間が6ヶ月以上あること
- 日本に住所を有しないこと(出国後であること)
- 老齢年金の受給権を有しないこと
- 出国から2年以内に申請すること
支給額の目安
支給額は「平均標準報酬額 × 支給率」で計算されます。加入期間が長いほど支給率が高くなりますが、 支給率には上限(60ヶ月)があります。詳細は日本年金機構の公式サイトでご確認ください。
POINT|帰国前に企業が行う対応
- 基礎年金番号または年金手帳の確認・コピー取得
- 脱退一時金制度について多言語で説明(ベトナム語・ミャンマー語等)
- 申請書類(日本年金機構のWebからダウンロード可)の取得方法を案内
- 帰国後の申請先住所(日本年金機構)を書面で渡す
- 帰国から2年以内の申請期限を口頭・書面で周知する
社会保障協定の概要
日本は複数の国と社会保障協定を締結しており、協定締結国からの外国人材は一定期間、日本の社会保険への加入が免除される場合があります。 これは保険料の「二重払い防止」が目的です。
| 協定の有無 | 主な対象国 | 実務上の取扱い |
|---|---|---|
| 協定あり(保険料免除) | ドイツ・英国・韓国・米国・フランス・オーストラリア等23カ国超 | 母国機関発行の「適用証明書」取得で日本の保険料免除が可能 |
| 協定なし(通常通り加入) | ベトナム・ミャンマー・インドネシア・フィリピン・ネパール等 | 日本の社会保険に通常通り加入。帰国時は脱退一時金で対応 |
外国人材の多くを占めるベトナム・ミャンマー・インドネシアは協定未締結国のため、 通常通り日本の社会保険に加入し、帰国時に脱退一時金を申請する流れになります。 協定締結国の外国人材(欧米系技術者など)を採用する場合は、適用証明書の取得手続きを確認してください。
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よくあるご質問
Q. 外国人材の社会保険加入は任意ですか?
任意ではありません。健康保険・厚生年金保険は、週の所定労働時間および月の所定労働日数が常時雇用者の4分の3以上(またはパート等の社会保険拡大適用要件を満たす場合)であれば国籍に関わらず強制適用です。未加入の場合、事業主は追徴金・行政指導の対象となります。
Q. 海外在住の親族を扶養に入れることはできますか?
健康保険の被扶養者として海外在住の親族を認定することは可能ですが、2020年4月以降は「海外特例」の厳格化により、送金証明・続柄証明(公的書類+認証翻訳)など複数書類の提出が必須です。また、実際に主として被保険者の収入で生計を維持されていることが条件となります。
Q. 脱退一時金はいつ申請できますか?また誰が申請しますか?
脱退一時金は、日本を出国した日の翌日から2年以内に日本年金機構へ申請します。申請は本人が帰国後に行います。企業側は帰国前に「年金手帳(基礎年金番号)の確認」「脱退一時金の仕組みの多言語説明」を行うことが推奨されます。申請書類は日本年金機構のWebサイトからダウンロードできます。
Q. 介護保険はいつから加入義務が発生しますか?
介護保険は40歳から加入義務が生じます(第2号被保険者)。外国人材も同様で、40歳以上は厚生年金と一緒に介護保険料が控除されます。40歳未満の外国人材には介護保険料は発生しません。なお、在留資格「外交」「公用」の方は適用除外となります。
Q. 社会保障協定締結国から来た外国人材の扱いはどうなりますか?
日本が社会保障協定を締結している国(ドイツ・英国・韓国・米国・フランス等23カ国超)からの外国人材は、「保険料二重払い防止」の観点から、一定期間は母国の制度のみに加入し、日本の年金・健保への加入が免除される場合があります。具体的な適用には「適用証明書」の取得が必要です。ベトナム・ミャンマー等は協定未締結のため通常通り日本の制度が適用されます。
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