この記事でわかること
- 居住者・非居住者の判定基準(1年ルール)と税率の違い
- 居住者となった外国人材の年末調整の手順と特有の注意点
- 国外居住親族を扶養控除に入れるための必要書類と2023年の制度改正
- 給与明細に英語注記を付ける場合の実例・テンプレート
- 医療費控除など確定申告が必要になるケース
居住者・非居住者の判定(1年未満は非居住者)
所得税法において、外国人材の税務処理は「居住者」か「非居住者」かによって大きく異なります。この判定を誤ると、源泉徴収税額の計算ミスや年末調整の誤りにつながります。
| 区分 | 定義 | 課税範囲 | 年末調整 |
|---|---|---|---|
| 居住者(一般) | 国内に住所あり、または現在まで引き続き1年以上国内に居所あり | 全世界所得 | 対象 |
| 居住者(非永住者) | 日本国籍なし、かつ過去10年以内の在留合計5年以下 | 国内源泉所得+国外源泉所得のうち国内払い分 | 対象 |
| 非居住者 | 居住者以外(入国後1年未満が目安) | 国内源泉所得のみ | 対象外(源泉徴収のみ) |
POINT|1年ルールの実務的な運用
- 入国後1年を経過した時点で原則「居住者」に変更され、年末調整の対象となる
- 在留資格が就労目的(育成就労・特定技能等)であれば、入国直後から「居住者」扱いとする実務も多い
- 判断が迷う場合は、最寄りの税務署に確認するか、税理士に相談することを推奨
- 非居住者期間の給与には通常20.42%(復興特別所得税含む)の源泉徴収が必要
居住者の年末調整手順
居住者に該当する外国人材は、日本人社員と同様に年末調整の対象です。 ただし、国外居住親族の扶養控除や住宅ローン控除等は追加書類が必要なため、 年末調整の時期(11〜12月)に早めに準備を促すことが大切です。
年末調整に必要な書類(外国人材)
- 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書(毎年提出)
- 給与所得者の基礎控除申告書・配偶者控除等申告書・所得金額調整控除申告書
- 国外居住親族がいる場合:親族関係書類・送金関係書類(詳細は次節)
- 生命保険料控除証明書(国内保険に加入している場合)
- 住宅ローン控除申告書(2年目以降、該当する場合)
注意|扶養控除申告書の多言語説明が必要
- 日本語のみの申告書では外国人材が記載内容を理解できず、空欄や誤記が多発します
- 各項目に英語またはベトナム語・ミャンマー語の説明を添付することを推奨
- 国外扶養親族の記載方法は日本人と異なるため、担当者が個別に確認・サポートを
扶養控除(国外居住親族)の必要書類と手続き
外国人材の多くは家族を母国に残しています。 これらの国外居住親族を扶養控除の対象にするには、2023年1月の改正後、要件が厳格化されています。
2023年改正後の要件(30歳以上70歳未満の国外居住親族)
以下のいずれかに該当する場合のみ、扶養控除の対象として申告できます。
- 留学により国内に住所・居所を有しなくなった者
- 障害者
- 38万円以上の送金を受けている者
必要書類
| 書類区分 | 具体的な書類 | 注意点 |
|---|---|---|
| 親族関係書類 | 戸籍謄本・出生証明書・婚姻証明書(外国語の場合は翻訳必須) | 続柄が証明できる公的書類 |
| 送金関係書類 | 銀行振込の送金明細・国際送金領収書 | 年間38万円以上の送金実績 |
| 留学証明(該当者のみ) | 外国の教育機関の在籍証明書(翻訳付き) | 留学が扶養要件の場合のみ |
POINT|書類収集は年末調整の2ヶ月前から
- 外国の公的書類は取得に時間がかかる(1〜2ヶ月以上)ことがある
- 10月上旬には書類リストを本人に渡し、準備を促すこと
- 日本語翻訳は公認翻訳は不要だが、内容の正確性を担保すること
- 書類が間に合わない場合は確定申告(翌年3月15日まで)で申請できる
給与明細の英語注記の実例
外国人材が給与明細の内容を正確に理解できるよう、各控除項目に英語(またはベトナム語・ミャンマー語)の注記を付けることを推奨します。 以下は主な項目の英語対訳例です。
| 日本語項目 | 英語表記 | 簡易説明 |
|---|---|---|
| 基本給 | Base Salary | Monthly base pay |
| 時間外手当 | Overtime Pay | Pay for extra working hours |
| 健康保険料 | Health Insurance Premium | Mandatory health insurance deduction |
| 厚生年金保険料 | Employees' Pension Insurance Premium | Pension insurance deduction |
| 雇用保険料 | Employment Insurance Premium | Unemployment insurance deduction |
| 所得税 | Income Tax (withheld) | Income tax deducted monthly |
| 住民税 | Resident Tax | Local government tax(前年所得に基づく) |
| 住居費控除 | Housing Deduction | Deducted per labor-management agreement |
確定申告が必要なケース
年末調整で処理できない控除や、複数の収入源がある場合は確定申告(翌年2月16日〜3月15日)が必要です。 外国人材が該当するケースを把握し、適切な案内を行いましょう。
- 医療費控除を申請したい場合(年間医療費が10万円超または総所得の5%超)
- 年末調整で書類が間に合わなかった国外居住親族の扶養控除
- 2ヶ所以上から給与を受けている場合(副業があるケースは在留資格に注意)
- 給与収入が2,000万円超の場合(稀)
- 住宅ローン控除の初年度
- 年の途中で退職し、年末調整を受けていない場合
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よくあるご質問
Q. 入国して3ヶ月の外国人材は居住者・非居住者どちらですか?
所得税法上、国内に1年以上の居所を有する者が「居住者」です。入国後1年未満の場合は原則として「非居住者」に該当し、国内源泉所得のみ課税対象となります。ただし、就労ビザで長期在留が見込まれる場合は、入国後まもなくから「居住者」とみなされるケースもあります。判断が困難な場合は税務署または税理士に確認してください。
Q. 国外居住親族の扶養控除は何人まで申告できますか?
人数の上限はありませんが、全員分の証明書類(親族関係書類・送金関係書類)が必要です。また、2023年1月以降、30歳以上70歳未満の国外居住親族については留学・障害・38万円以上の送金のいずれかの要件が追加されました。年末調整で処理できなかった分は確定申告で申請できます。
Q. 給与明細は日本語のみで問題ありませんか?
法的には日本語のみでも違法ではありませんが、外国人材が控除内容を理解できないことで「給料が間違っている」とのトラブルが頻発します。ベトナム語・ミャンマー語等の注記を付けるか、簡易説明書を別途交付することが強く推奨されます。CSTMキャリアサポートでは多言語給与明細テンプレートの提供支援を行っています。
Q. 外国人材が医療費控除を申請したい場合、どうすればよいですか?
医療費控除は年末調整では処理できないため、本人が翌年2月16日〜3月15日に確定申告を行う必要があります。外国人材の場合、日本語での確定申告書作成が難しいケースが多いため、会社として税理士紹介・申告書の記載支援を行うことが定着にもつながります。
Q. 年の途中で帰国した外国人材の年末調整はどうしますか?
帰国時に非居住者となる場合、帰国日以降の給与は源泉徴収税率が変わります(原則として国内源泉所得に20.42%の源泉徴収)。帰国前に「出国後の確定申告」または「納税管理人の選任」が必要になるケースがあります。帰国が決まった時点で税理士・社労士に相談することを推奨します。
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