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Guide / 労務管理

外国人従業員に対応した就業規則チェックリスト

この記事のポイント

  • 就業規則の作成・変更義務と外国人雇用に伴う実務上の追加整備ポイントを解説
  • 言語対応・宗教的配慮・帰国休暇など外国人向けに追加すべき項目を網羅
  • 多言語版作成のポイントと日本語版が正本となる法的扱いを確認
  • 労基署への届出手順と外国人が理解できる形式での説明義務を整理

公開日:2026年6月7日 / カテゴリ:労務管理 / 対象:外国人採用担当者

この記事のポイント

  • 就業規則の作成・変更義務と外国人雇用に伴う実務上の追加整備ポイントを解説
  • 言語対応・宗教的配慮・帰国休暇など外国人向けに追加すべき項目を網羅
  • 多言語版作成のポイントと日本語版が正本となる法的扱いを確認
  • 労基署への届出手順と外国人が理解できる形式での説明義務を整理

就業規則と外国人雇用の関係

就業規則とは、労働条件や職場のルールを定めた書面であり、常時10人以上の従業員を使用する事業場では作成・届出が労働基準法第89条により義務付けられています。外国人従業員を雇用する場合も、日本人と同様にこの就業規則が適用されます。しかし、就業規則が日本語のみで作成されている場合、外国人従業員が内容を十分に理解できないまま雇用契約が始まるリスクがあります。

労働基準法第106条は、就業規則を従業員に「周知」することを義務付けています。単に掲示・配布するだけでなく、実質的に理解できる状態にすることが「周知」の趣旨と解釈されており、外国人従業員に対しては多言語での説明やわかりやすい翻訳版の提供が求められます。特定技能・育成就労においては、受け入れ機関が「情報提供を母国語等で行う」ことが支援計画の必須事項として規定されており、就業規則の説明もその一環です。

POINT|外国人雇用で就業規則を見直すべき理由

  • 外国人従業員が就業規則を理解できない場合、労働紛争の原因になる
  • 特定技能・育成就労では母国語での情報提供が支援計画の必須要件
  • 宗教・文化的事情への未対応が職場トラブルや離職につながるリスクがある
  • 書面整備が採用担当者・会社双方を守る根拠書類となる

法的必須記載事項の確認

就業規則には絶対的必要記載事項(必ず記載しなければならない事項)と相対的必要記載事項(定めを置く場合に記載が必要な事項)があります。外国人従業員を雇用する場合も、まずこれらの基本事項が適切に記載されているかを確認することが出発点です。

区分主な記載事項
絶対的必要記載事項始業・終業の時刻、休憩時間、休日・休暇、賃金の決定・計算・支払い方法、昇給に関する事項、退職に関する事項(解雇の事由を含む)
相対的必要記載事項退職手当、臨時の賃金・最低賃金額、食費・作業用品の負担、安全衛生、職業訓練、災害補償、表彰・制裁
外国人向け追加項目在留資格更新サポートの有無、宿舎・住居条件、帰国休暇の取り扱い、宗教的配慮事項、母国語相談窓口

外国人向けに追加すべき項目

既存の就業規則に日本人向けの最低限の記載しかない場合、外国人従業員の雇用に際して以下の項目を追加・補足することを検討してください。これらは法的義務ではないケースもありますが、実務的なトラブル予防として有効です。

言語対応

就業規則の多言語版(参考訳)を整備し、入社時に本人に交付します。翻訳精度が低い場合は誤解を招く可能性があるため、プロの翻訳や母国語話者のネイティブチェックを経ることを推奨します。また、業務指示や社内連絡の言語対応方針(例:重要書類は日英・日本語ミャンマー語の2言語で作成)を就業規則または別規程に明記しておくと、後の紛争予防になります。

宗教的配慮

イスラム教徒の従業員がいる場合、礼拝時間(1日5回)の扱いが問題になることがあります。休憩時間内に礼拝を行うことを認めるのか、礼拝スペースを設けるのかを明記します。食事制限(ハラール・ベジタリアン等)については、食事提供をしている場合のみ関連規定が必要です。全員に平等なルールとして定め、特定宗教を優遇・差別するような表現は避けてください。

帰国休暇の取り扱い

外国人従業員の多くは年に1〜2回の帰省を強く希望します。有給休暇の計画的付与(年5日の取得義務)の枠組みで対応するか、特別休暇として制度化するかを明確にしておくことで、繁忙期と帰省時期の調整をルールに基づいて行えます。帰省のための長期休暇(7〜14日程度)を認める場合は、申請期限・承認手続きを就業規則または運用細則に記載します。

POINT|追加すべき項目チェックリスト

  • 多言語版(参考訳)の整備と入社時交付
  • 礼拝時間・礼拝スペースの取り扱い
  • 食事制限への対応方針(食事提供がある場合)
  • 帰国休暇の申請・承認ルール
  • 在留資格更新サポートの有無と手続き
  • 宿舎・住居に関する条件(入居・退去ルール)
  • 母国語相談窓口・緊急連絡先の明示

多言語版就業規則の作り方

多言語版就業規則は、日本語版の「参考訳」として位置付け、日本語版が正本である旨を明記します。翻訳にあたっては、法律用語・専門用語をできる限り平易な表現に置き換えることが重要です。例えば「懲戒解雇」を「重大なルール違反があった場合に、予告なく雇用契約を終了すること」と説明するなど、概念の説明を補足することで理解度が高まります。

翻訳完了後は、実際に対象言語を母国語とする従業員にレビューしてもらい、わかりにくい箇所を修正することを強く推奨します。機械翻訳のみでは法的に重要なニュアンスが失われるリスクがあります。特にミャンマー語・ネパール語など、日本語との言語構造が大きく異なる言語では、文字通りの翻訳が誤解を招く場合があります。

注意|多言語版の法的効力

  • 多言語版は参考訳であり、法的効力は日本語版が持つ
  • 日本語版と多言語版に乖離がある場合は日本語版が優先される旨を明記する
  • 機械翻訳のみでの作成は重要な誤訳が生じるリスクがある
  • 労基署への届出は日本語版のみで可(多言語版の届出は不要)

労基署への届出と周知義務

常時10人以上の従業員を使用する事業場は、就業規則を作成または変更した場合、労働基準監督署(労基署)に届け出る義務があります(労働基準法第89条・第90条)。届出の際には労働者代表の意見書を添付します。届出は日本語版のみで行い、多言語版を添付する必要はありません。

就業規則を作成・変更したあとは、従業員への「周知」が必要です。周知の方法は①常時見やすい場所への掲示、②書面の交付、③コンピュータ等での閲覧可能な状態の設定のいずれかが認められています。外国人従業員には、単に書面を渡すだけでなく、内容を理解できたかを確認する機会(入社時説明会、個別面談等)を設けることが実務上の重要なポイントです。

外国人が理解できる形式での説明義務

就業規則の内容を外国人従業員が理解できる形式で説明することは、労働紛争予防の観点から不可欠です。入社時のオリエンテーションで就業規則の主要事項を多言語で説明し、説明を受けたことを確認する署名(確認書)を取得しておくことで、後のトラブル発生時に「知らなかった」という主張を防ぐことができます。

特に重要な事項は①賃金の計算方法・控除内容、②休日・休暇の取得方法、③遅刻・欠勤の手続き、④懲戒の対象となる行為、⑤退職・解雇の手続きです。これらは母国の労働慣行と大きく異なる場合があるため、具体的な事例を交えた説明が理解を深めます。

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よくあるご質問

Q. 就業規則は外国人を雇用するだけで変更が必要ですか?

法的に「外国人雇用を理由とした変更義務」はありませんが、既存の就業規則が日本語のみで記載されている場合、外国人従業員が内容を理解できない可能性があります。理解できない状態で規則を適用すると労働紛争の原因になるため、実務上は多言語化・内容の補足が強く推奨されます。

Q. 宗教的配慮はどこまで就業規則に書けばよいですか?

礼拝時間の取り扱いや食事制限に関するルール(例:ハラール食の提供有無、礼拝スペースの有無)を明記することで、入社前後のミスマッチを防げます。全従業員に共通のルールとして設定し、特定宗教を優遇するような表現は避けましょう。

Q. 就業規則の多言語版は法的効力がありますか?

日本語版が正本となります。多言語版はあくまで理解を助けるための参考訳です。多言語版と日本語版に乖離がある場合は日本語版が優先される旨を多言語版にも明記しておくことが重要です。

Q. 労基署への届出は多言語版でも必要ですか?

労働基準監督署への届出は日本語版の就業規則のみで構いません。多言語版は届出対象ではなく、従業員への周知のために使用するものです。

Q. 常時10人未満の事業所でも就業規則は必要ですか?

常時10人未満の事業所は就業規則の作成・届出義務がありませんが、外国人従業員がいる場合は労働条件を明文化しておくことで紛争予防になります。特定技能・育成就労では支援計画や誓約書に準じた書面整備が別途必要です。

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